慢性GVHDは広い意味での自己免疫疾患と考えられ、その病因の一つとして自己反応性T細胞の関与が考えられている。一方、T細胞抗原レセプターVβ17陽性T細胞は、末梢血中には非常に少数しか存在しないが、IN VITROの研究では自己抗原に非常に強く反応すると言われているユニークなT細胞である。我々は骨髄移植後の患者でこのVβ17陽性細胞をPCR法で検出することにより慢性GVHDの診断およびその重症度判定が可能か否かを検討した。今回の研究では骨髄移植後100日以上経過し、臨床的に慢性GVHDの症状を有する患児2名、慢性GVHDの症状の見られない患児3名からそれぞれ末梢血単核球を採取しDNAを抽出しPCR反応を施行した。その実験結果は以下の通りである。 (1)慢性GVHD陽性の患者2名共にVβ17特異的バンドの増幅がみられたが、慢性GVHD陰性の患児3名では、Vβ17特異的バンドは検出されなかった。 (2)免疫抑制剤(FK506)を服用している慢性GVHD陽性患児では、FK506の増量および症状の軽減に伴い、Vβ17特異的バンドの増幅が弱くなることが確認された。 (3)慢性GVHD陽性の患者2名の間でのVβ17特異的バンドの増幅度の差は、必ずしも両者のGVHDの重症度の違いを意味するものではなかった。 *以上の結果より、PCR法によるVβ17特異的バンドの検出は慢性GVHDの診断および同一患者での重症度のモニタリングには有用であると考えられたが、複数の患者間での重症度の比較に用いるには現段階ではまだ無理があると思われた。
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