研究概要 |
皮膚の光老化に関する研究の多くは実験動物を用いて行われているが,我々は,線維芽細胞にin vitroで三次元構造を構築させた真皮モデルを用いた.この系を用いることにより紫外線照射によって炎症細胞が分泌するサイトカインなどの影響を受けずに紫外線の線維芽細胞への直接作用が検討できると考えられる.UVA(320〜400nm)照射では,長時間照射による細胞のコンタミネーションおよび二酸化炭素分圧の変化を防ぐためCO_2インキュベータ-を改造して使用した.UVAを1日おきに1週間(4回)照射した後,翌日細胞層を回収し細胞層のDNA量を測定したところ,照射量が1000mJ/cm^2までは照射群では非照射対照群に比べ,DNA量はほとんど変化しないが,1500mJ/cm^2では約85%,3000mJ/cm^2では約40%,6000mJ/cm^2では約15%に減少しておりUVAの強い細胞障害作用が認められた.次に細胞障害をおこさない照射条件下(500mJ/cm^2,4回)におけるUVAの直接作用を検討した.細胞層中のコラーゲン量を比較すると,照射群では非照射対照群に比べDNA量あたりの中性不溶性コラーゲン中のハイドロキシプロリン量は増加し,HPLCによる二糖分析ではムコ多糖量,とくにヒアルロン酸が増加する傾向が認められた.これらはヒトやマウスの光老化した皮膚の分析結果に一致していた.UVB(290〜320nm)については1回照射で,10mJ/cm^2まではDNA量にほとんど変化はなかったが,20mJ/cm^2では約28%に減少し,UVAよりさらに強い細胞障害作用が認められた.5mJ/cm^21回照射後に細胞層中のムコ多糖二糖をHPLCにより分析したが照射による変化は認められなかった.SDS-PAGEによるコラーゲン分析でも照射による変化は認められなかった.今年度は三次元構築をとらせた真皮モデルに対する紫外線照射の影響を検討し,照射条件の設定が終了した.今後,さらに症例数を加えるとともに,確認実験をおこなって行きたい.
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