研究概要 |
これまでに確立した、微弱光スペクトル増感法を応用した微小循環測定法でラット背部皮膚の炎症反応を測定した。1.ヒスタミンとサブスタンスPの皮内注射によりそれぞれ用量依存性の透過性亢進が示された。サブスタンスPはより低濃度で亢進作用を示した。2.カプサイシンの皮内注射により用量依存性に血管拡張、血管透過性亢進がみられた。これは知覚神経終末からペプチドの放出が促進されたためと考えられた。3.1%カプサイシン溶液塗布の前処置後、ヒスタミンを皮内注射した。無処置群に比べヒスタミンによる透過性亢進は有意に抑制された。従ってペプチドの枯渇、知覚神経変性がヒスタミンの反応に影響を及ぼすことが示唆された。4.ヒスタミンH_1拮抗薬ジフェンヒドラミンの静注前投与により、ヒスタミン皮内注射の反応に加え、サブスタンスPの反応も有意に抑制された。すなわちペプチドの反応に対するH_1受容体の関与が示唆された。一方、H_2拮抗薬シメチジンの静注前投与で、ヒスタミンの反応は有意に抑制されたがジフェンヒドラミンに比べ弱い抑制であった。サブスタンスPの反応は抑制されなかった。ラットでは皮膚微小循環におけるH_2受容体の関与ははっきりしていなかったが、透過量を指標とした本実験で、関与が示唆された。逆に、サブスタンスP受容体拮抗薬[D-Pro^2,D-Trp^<7,9>]-サブスタンスP静注前投与ではサブスタンスPの反応に加え、ヒスタミンの反応も有意に抑制した。ヒスタミンの反応に対するサブスタンスP受容体の関与が示唆された。以上より、ヒスタミンとペプチドの作用が相互に関連することが考えられた。5.免疫組織化学法により皮膚血管周囲の神経終末にサブスタンスP、CGRP様免疫陽性物質が証明された。またAlcian blue染色で血管周囲にヒスタミンを含む肥満細胞がみられた。これらのことから相互作用の可能性が形態学的に裏付けられた。
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