研究概要 |
肺腫瘍に対して経皮的に穿刺針を刺入し穿刺針の先端で高周波(RF)による熱を発生させ、その熱により腫瘍細胞を壊死させる治療法を考案し基礎的実験を行った。 実験動物は家兎(体重2.5〜3.0Kg)を用いた。装置はRF発生装置として、出力:15W,周波数:3.8MHzのSurgitron FFPF(E11man)を用いた。穿刺針は、0.016inchのステンレススチールワイヤーを用い、穿刺針の被覆絶縁体として24Gのサーフロー針の外套を用いた。肺腫瘍の作成は家兎の耳静脈よりVX-2細胞を投与し、飼育観察を行なった。3週間後、麻酔下に両側開胸を行い肺内腫瘤を確認した。次いで、直視下に腫瘤内に穿刺針を刺入しRFを10秒間通電させた。通電直後に屠殺解剖し、肉眼的および組織学的に腫瘤およびその周囲の肺を観察した。 1.肺腫瘍の作成 VX-2細胞の静注後3週間で両肺に直径1〜6mmの多発性腫瘤が生じた。 2.RF通電中および通電後の腫瘍の肉眼的変化 腫瘤部分はRF通電開始数秒後より治療前の赤色から黄白色に変色しはじめ、通電後には黄白色ないし茶色に変色した。しかし、腫瘍周囲の肺には変化は認められなかった。 3.RF通電後の組織学的変化 腫瘍部は熱による変性壊死を認めたが腫瘍周囲の肺組織の肺胞構造には変化は認められなかった。 以上より、本法は孤立性肺腫瘍に対して、周囲肺組織の損傷が少なく腫瘍のみ壊死させることができる新しい治療法のひとつに成り得る可能性があるものと考えられる。
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