本研究では、健常者と精神分裂病者における認知課題遂行中の脳血流変化を高速MRIで計測し、血流の変化と事象関連電位との相関を調べ、精神分裂病の病態について新しい知見を得ることを目的とした。 高速MRIによる、脳血流の計測は本大学医学部放射線科の協力を得て、現在約3秒間の脳血流の変化を計測し、画像化することが可能となった。 しかしながら、MRI室での脳波記録において脳波計およびヘッドアンプ(増幅器)が研究開始前の予想以上に磁場の影響を受けることがわかった。当初はカーボン電極およびカーボン導線によってMRI装置の中心部、すなわち磁場発生部位から十分な距離が保てるとの予想であった。しかしカーボン導線の材質および制作上の問題から、その長さは2mが限界であった。このため、脳波記録の際ヘッドアンプが磁場の影響を受け故障した。次に、カーボン導線に従来の銅製導線を接続し、MRI装置の中心部から脳波計およびヘッドアンプまでの距離を延長した。ヘッドアンプおよび脳波計は問題なく作動したが、銅製導線が磁場の影響を受け、脳波にアーチファクトが多く混在した。その後、接続部がシールドされた長さ約1.5mの延長用カーボン導線を特別に注文し、現在それを用いて脳波記録の予備実験を続けている。 今後、脳波記録が確実に行えることが確認され次第、認知課題遂行中の脳血流の変化を高速MRIで計測したい。解析処理としては、課題非遂行時の脳血流変化を対照とし、遂行中の画像から差し引いた引き算画像を作成する。その結果より、認知課題遂行時に活性化される脳部位を推定したい。
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