精神神経疾患の原因遺伝子にはゲノムのレアレンジメント(rearrangement)を伴った例がみられ、その中でも最近CAGやCGGなどの3塩基のリピート配列の伸長が起っているものが次第に明らかにされてきている。精神神経疾患において3塩基の伸長などのゲノムのレアレンジメントの存在を検討するため、先ず中枢神経系において発現するCAGなどの繰り返し配列を有する遺伝子の単離を試みた。〈方法〉ラット大脳皮質cDNAライブラリーのファージストックより調製したcDNA mixtureを鋳型として(CAG)_<10>あるいは(CTG)_<10>とファージDNA配列をプライマーに用いてPCRを行ない、得られたPCR産物をpCRIIにクローニングした。得られたクローンをSanger法あるいはオートシークエンサーを用いて塩基配列を決定した。〈結果〉(CAG)_<10>プライマーを用いたPCR産物をアガロース電気泳動を用いて解析した結果、多数のバンドが得られていることが明かとなった。これらのPCR産物をpCRIIにライゲーションし、インサートの有無を調べた結果、40個のクローンが得られていた。このうち12クローンの塩基配列を決定しGenBankデータベースをホモロジーサーチしたところ11クローンが未登録のcDNAであることが明かとなった。CAG-32は、ヒトlymphoblastoid cell line cDNAよりクローニングされたHSA72A091など5つの機能未同定の遺伝子と部分的にホモロジーの高いことが示された。〈考察・今後の展望〉今回得られたクローンのインサートサイズは約300-700塩基対であり、比較的短いインサートであったが、これはPCRとライゲーションの特性によるものと思われた。今後はすべてのクローンの全長のクローニングを行ない全塩基配列を決定すると共に、FISH(Fluorescence in situ hybridization)法によって遺伝子座を同定し、精神神経疾患とリンクすると考えられる座位と一致したクローンに関して疾患家系における連鎖やリピートの伸長を検討していく予定である。
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