研究概要 |
5%CO_2-95%N_2でガス化したKrebs-Henseleit液(A液)のPO_2が22-25mmHgで,体内の肺動脈血に相当することを予備実験にて確認した.妊娠ラットを妊娠18.5日及び20.5日にペントバルビタール麻酔下に帝切し、4℃に調整したA液中にて胎仔を開胸後,実体顕微鏡下で肺動脈,末梢肺動脈,動脈管および大動脈を一塊に摘出することは問題なく行えるようになった.ところが比較的単離しやすい左肺動脈に比べ右肺動脈の単離は技術的に難しく,安定した検体が得にくいことから実験には不適当と判断し,以後は左肺動脈のみを実験に用いることとした.単離した左肺動脈を37℃のA液中で30分安定させてから測定を行った.まず,酸素分圧が末梢肺動脈の拡張に及ぼす影響をみるために5%O_2-5%CO_2-90%N_2でガス化しPO_280-90mmHgに調整したB液を用意し,37℃のAとB液を用いて潅流実験を行った.30分A液中で安定させた時点で,光学顕微鏡下で末梢肺動脈の内径をビデオデッキに出力し,ついでB液に変更後の内腔の変化を経時的に記録した.この時点で主に2点が問題となった.1点はA液中で安定させた時点で既に内径の個体差が大きい点であり,もう1点は酸素分圧の高いB液に変更すると,次第に肺動脈内膜の辺縁が光学顕微鏡にて確認しにくくなってしまうことであった.前者に関しては,個体により5分で単離のすむものから20分かかるものもあったため,単離操作に要する時間に個体差があることが一因であるかと考えられた.このため単離を繰り返し操作の熟練を待って同様の実験を行ったが,やはり個体差は有意であり,その原因に関しての検討が必要となった.後者に関しては測定開始時点で内腔が確認できても,時間経過により血管の位置が微妙に変化してしまうこと,また血管内腔に微小気泡ができてしまうことが問題と思われた.現在は光学系の改良と内腔の確認を容易にするために色素の注入等の工夫を試行している.
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