1・目的:肝門部血行遮断下の肝切離時の出血は、主に静脈系からの出血と考えられている。本研究では、ベルヌ-イの定理に基づく手法で肝静脈圧を下げることにより、肝切除中の出血がどのように影響を受けるかを明らかにするのが目的である。 ベルヌ-イの定理:P=Const.-ρgh-1/2ρv^2に基づき、Const.(循環血流量)、ρgh(心臓に対する肝部中心静脈の高さ)、1/2ρv^2(流速)を考え、肝静脈圧(肝部中心静脈圧)及び出血量への影響を検討する。 2・方法:ブタを用いて肝右葉切除、前区域切除、外側区域切除術を行い、それぞれの群において次のことを検討した。(1)ブタの体重(10〜35kg)の8%を循環血流量とし、循環血流量が、肝部中心静脈圧及び出血量に与える影響を検討した。(2)手術の体位によって肝部中心静脈圧の心臓に対する高さを変え、それによる肝部中心静脈圧及び出血量への影響を検討した。(3)肝部中心静脈圧を1/4クランプ、または1/2クランプして静脈の口径を狭めることにより流速を上げ、それによる肝部中心静脈圧及び出血量への影響を検討した。 肝部中心静脈圧はモニター端子の先端を直接下大静脈に留置して測定した。 出血量はガ-ゼ出血、吸引を合計した。 3・結果:(1)体重が少ないブタでは中心静脈圧は低く、出血量も少なかった。(2)左側臥位にした場合、最も中心静脈圧は下がり、出血量も少なかった。頭部を下げても同様の傾向にあったが、左側臥位ほどの効果は認められなかった。(3)下大静脈をクランプすると、中心静脈圧は上昇する傾向にあり、出血量への有意な影響は認めなかった。これについては、下大静脈中の流速を上げる方法についてなお検討中である。
|