十二指腸乳頭括約筋(SO)の運動機能異常に起因した狭義の胆摘後症候群(胆摘後ジスキネジア)の病態は未知の部分が多く、診断基準も確立されていない。我々は、胆摘後症候群が疑われる4症例に対し(1)胆管圧と十二指腸圧を同時に長時間記録するdouble micro-tranceducer(DMT)法により、空腹時の上部消化管の生理的周期運動であるmigrating motor complex(MMC)と相関した胆管圧を測定するとともに(2)endoscopic perfusion manometry法によりSO内圧を直接測定(SOM)しその結果を比較検討するとともに胆摘後ジスキジアの診断基準にについての検討を行った。また、(3)SOの3次元的な構造を検討するため胆嚢結石、胆嚢ポリ-プ症例に対し対照群として22例はstation pull-throughを行わずに、2例は圧体積を求めるためにstation pull-throughを行いSO vector manometry(SOVM)を施行した。 胆摘後症候群が疑われた4例はDMT方法により十二指腸のMMCphase IIIに一致して腹痛の発現と胆管内圧の上昇を認めた。さらにモルヒネ負荷によりSOの収縮を誘発すると腹痛と胆管内圧の上昇が認められさらにセルレインを投与しSOを弛暖させると腹痛は消失し胆管内圧は正常化した。一方SOM法では1例にSOのphasic waveに一致して疼痛を訴える症例を認めた以外は胆摘後症候群に特異的と思われる所見は認めなかった。また、正常なSOに対するSOVMによりSO内圧が非軸対称であることが判った。ベクトル圧体積については検討できるほどの症例数がなかった。 DMT法が胆摘後症候群の診断に有用であった。SOM、SOVM法については症例を増やしさらに分析をしてゆきたい。
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