研究概要 |
1.虚血再灌流時の腸管運動 (非虚血時の腸管運動)5-10分間隔で単発性,spike様の収縮を認めた. (虚血時の運動)虚血5分以内に次第に増強漸減する高周波の痙攣様の強収縮波形が認められた.また,その強収縮は徐々に減弱し30分以内に消失した. (再灌流時の運動)30,60分虚血群の全例および90分虚血の一部の症例において再灌流後10-20分後よりspike様の収縮波形が散発性に出現した.出現間隔は不規則であったがその後も持続した.その他の90分虚血および120分虚血群においては収縮波形の出現は認められなかった. 2.エネルギー代謝・腸管運動の比較検討 ATPの変動においては虚血後30分間に急速に低下し,虚血前に比し約30%にまで低下し,その後緩慢に低下した.この変動は腸管運動の振幅の増減とよく相関するものであり興味ある結果であった.再灌流後のATPの回復程度は虚血時間と負の相関を示したが,再灌流後の収縮波の出現の有無との関係に解明にはさらなる検討が必要と思われる. 腸管運動における各種薬剤の反応 カルシウム拮抗薬に関しては虚血時の強収縮は有意に抑制された.同時にATPの虚血時における低下の抑制,再灌流時における良好な回復を認めた.ネオスチグミンは非虚血時において腸管の収縮を惹起した.また,再灌流時においては30,60分虚血の全例および90分虚血の一部の症例で収縮を惹起し腸管のviabilityとの関係を示唆する所見と考えた. 4.組織学的検討 HE染色では虚血時間が延長するに従って浮腫,絨毛の脱落,出血が認められた.S-100蛋白染色では神経線維とグリア細胞の染色性は時間の経過とともに低下し,120分ではほぼ消失していた.虚血60分以上では神経線維の膨化とグリア細胞核の空胞化および核の変形など細胞変性,壊死の変化がみられ,虚血時間とともに顕著となり,120分後には神経節細胞も変性・壊死を呈していた.
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