重症免疫不全マウスを用いて作成したヒト型抗ヒト扁平上皮肺癌モノクローナル抗体の特異性について以下の検討を行った。 1)喀痰細胞による検討 塗沫標本で喀痰中に癌細胞の認められている患者の喀痰を採取して蛍光抗体法によって喀痰中の癌細胞の検出を試みたところ、扁平上皮癌および小細胞癌の患者の検体中に反応細胞を認めたが、肺腺癌患者、非癌患者の検体には反応細胞を認めなかった。厳密にはこの方法では反応を認めた細胞が癌細胞かどうかを確認することが困難ではあるが、喀痰細胞診への応用の可能性が示唆された。フローサイトメーターによる判定も少数試みたが、粘稠な喀痰をどのように処理すればよいかが今後の課題である。 2)免疫組織学的検討 本抗体によるパラフィン包埋標本の免疫染色は抗原の失活と考えられる理由で特異性を検討するには不適当と判断し、原発性肺癌の手術例の新鮮凍結標本についてその検討をおこなった。標本の数が限られているため本年度には結論にまで至らなかったが、やはり肺癌の組織では扁平上皮癌組織に反応する傾向があった。
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