研究実施計画に準じ、生後約1ヵ月の幼若猫の第5仙椎部を椎弓切除後、仙髄硬膜管を5mm引き下げ、フィブリン糊にて周辺組織と固定したものを1群、牽引操作を加えずにフィブリン糊にて周辺組織と固定したものを2群、コントロール群を3群とした。1群3匹、2群3匹、3群4匹の計10匹を用いて実験を行った。全例にネンブタール腹腔内麻酔を行ったが、3例が術中呼吸停止をきたし死亡した。術後生存した7例について経過観察した。生存例の内訳は、1群2例、2群2例、3群3例である。1群では術後7日目と50日目に死亡した。2群では術後3日目と19日目に死亡した。1群の50日目死亡例と2群の19日目死亡例の腰髄膨大部の横断切片を作製し、HE及びLFB染色を行った。3群の2例は術後19日と50日目に屠殺し、同様の横断切片を作製、HE及びLFB染色を行い、1、2群と組織学的に比較検討した。1群では核染色性が増加し、全体に萎縮変性した前角細胞が観察され、急性脊髄牽引操作による脊髄前角の虚血性変化の存在がうかがわれた。2群は3群と同様の正常な脊髄の所見を認めた。3群の残り1例については、成長が終了した生後6ヵ月目に、全麻下に伝導性脊髄誘発電位と分節性脊髄誘発電位を測定後、屠殺し各脊髄高位の横断切片を作製し、HE及びLFB染色を行った。1群、2群では成長が終了する術後5ヵ月までの生存例を得ることができず、慢性実験モデル作製の目的が達成されていない。その原因としては、麻酔や手術侵襲に対しての体力的な弱点や飼育過程での母獣の必要性等が考えられる。また幼若猫の入手は困難であり、今後、実験を継続する必要性から、入手が容易であり、飼育も比較的容易な幼若家兎を実験材料に変更し、同様の実験を試みている。現在1群1例、2群1例、3群3例(1、2群は術後8週と9週経過中)を経過観察中である。
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