研究概要 |
神経組織の圧迫病変における神経系細胞障害のメカニズムを理解するために、培養細胞を用いて、圧迫時におけるセカンドメッセンジャーの変化を測定した。 細胞培養系として1)アストロサイトcell line、 2)神経細胞cell lineを使用した。培養は密封可能なフラスコで行い、圧力計でモニターしながら、適当量のHeをボンベからフラスコ内へ圧出することにより加圧した。この条件において、培養細胞に加わる酸素分圧は一定である。加圧の強さとして、(1)760mmHg(コントロール)、(2)800mmHg、(3)880mmHg、(4)920mmHgの4種類を設定した。約5秒で設定した加圧量に達し、その後その圧を維持した。加圧して(1)1分、あるいは(2)10分(それぞれ急性、慢性モデルとする)後、最終濃度1NになるようにTCA液を加え、反応を停止させた。細胞およびメディウムを取り出し、ソニケイション後、遠心し上清液を抽出した。これにRIAを用いてセカンドメッセンジャー(cyclic-AMP,IP3)の測定を行い、蛋白補正して最終値を算出した。なお、圧迫時における細胞のviabilityは確認している。さらに各cell lineについて、顕微鏡下で上記と同様の方法で加圧しながらリアルタイムで細胞内Caの変化を測定できるチャンバーを作成した。細胞内Ca測定には蛍光プローブとしてFura-2を用い、細胞内Ca上昇により励起されたFura-2蛍光を、アルガス50(現有)を用いて視覚経時的に測定した。 アストロサイトでは、加圧量の増加に伴いcyclic-AMP,IP3の変化に有意差を認めなかった。それゆえ、現在加圧量および加圧時間に変化を加え検討中である。また、アルガス50を用いた実験では加圧量に応じた細胞内Caの低下が認められ、これが加圧に応じたカバーガラスの歪みに起因するか否かについて、硬質の石英のカバーガラスおよびlong distanceの対物レンズを使用して検討している。神経細胞および両者の共存培養については、現在測定中である。
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