われわれは、これまでカルシウムが疼痛発現機序に大きく関わっていることをイオントフォレ-シスを用いて示唆してきた。今回われわれは、カルシウムチャンネル開口薬であるカルシウムイオノフォア(A23187)をイオントフォレ-シス使用して末梢皮膚より投与し、その疼痛閾値に及ぼす影響について検討した。 対象は健康成人ボランティアとし、実験の主旨を説明して同意を得た。イオントフォレ-シスの陽極にA23187またはニカルジピンを2mg用い、陰極には硝酸ナトリウムを5ml使用し、イオントフォレ-シスを前腕屈側で10分間行い、その後の疼痛閾値を45度の熱を加えて疼痛を感じるまでの時間を計測するtime-mode法で評価した。その結果、ニカルジピン投与群では疼痛閾値が有意に上昇したのに対して、A23187投与群では疼痛閾値の上昇はなく、かえっA23187で前処置をすることにより、その後ニカルジピンを用いたイオントフォレ-シスを施行しても、疼痛閾値は上昇しなかった。 また以前のわれわれの実験から、ニカルジピンによるイオントフォレ-シスを施行した部位にカルシウムを塗布することにより、疼痛閾値の上昇が拮抗されたことから、そのカルシウムレセプターの位置が非常に浅いところにあると考えられたため、今度はブタの皮膚を使用し、その浸達度とカルシウムレセプターとの関係を検討しようとしたが、レセプターの存在を証明することは困難であり、今回の実験からだけでは両者の関係は明らかとならなかった。しかしボランティアからの実験により、末梢においても疼痛発現の機序にはカルシウムチャンネルが深く関与していると考えられた。
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