研究概要 |
ビタミンDの卵巣癌細胞に対する増殖抑制作用にを調べる目的で以下の添加実験を行った。今回はビタミンDとして活性型ビタミンDの誘導体で高カルシウム血症を来さないといわれる22-oxacalcitriol(OCTと略)と、比較対照のために活性型ビタミンDの前駆体である1-αhydroxy-vitaminD_3(1α-D_3)の2種を使用した。また培養卵巣癌細胞株として漿液性腺癌由来の細胞株であるSHIN-3、KF、NK211、HTOA-1と、粘液性腺癌由来の細胞株であるMN-1,OMC-3を用いた。実験方法は各細胞3×10^3個を24ウェルプレートに生着させ上記OCTおよび1α-D_3を1×10^<-7>Mから1×10^<-11>Mの濃度で添加しながら約2週間培養したのち、生着細胞数をビタミンD添加群と未添加群との間でMTT法によって測定した。結果はOCT添加においてはMN-1細胞で1×10^<-10>Mより濃度依存性に細胞増殖抑制を示し、1×10^<-7>Mでは50.1%の抑制を示した。その他の5種の細胞では明らかな抑制は観察されなかつた。また1α-D_3添加においては使用した6種の細胞とも明らかな抑制は観察されなかった。現在このOCTによる細胞増殖抑制効果がビタミンD受容体(VDRと略)を介した作用であるかを調べるために、VDRのmRNAの存在の有無を上記6種の細胞より抽出したRNAを用いてreverse transcriptase-polymerase chain reaction法により検討中であるが、今回の結果より活性型ビタミンD誘導体であるOCTはある種の卵巣癌に対して増殖抑制効果のあることが示され、OCTが新たな卵巣癌治療薬となりうる可能性が示唆された。
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