経頭蓋磁気刺激法を用いて、顔面神経に関し、研究を行った。 1.顔面神経麻痺患者の麻痺の程度と予後推定に有用であるか。 麻痺患者の麻痺の程度をHouse-Brackmannの分類に従って検討した。麻痺の程度が比較的軽症な症例では、麻痺発症後7日目の検査では、磁気刺激によるCMAPsを認めた。しかし、中等症、重症例ではCMAPsは認めなかった。この結果は、従来までの電気刺激を用いて、経皮的に顔面神経を刺激するENoGと比較すると反応閾値が高く、臨床的には今後の検討が必要と思われた。しかし、安定性については非侵襲的な刺激法であることも加え、充分満足できる結果であった。 2.磁気刺激時に発するノイズが聴覚へ影響を与えるか否か。 ネコの頭部を1000回磁気刺激して、聴覚への影響をABRを用いて検討した。ノイズレベルは140dBに達し、パルス波形であったが、刺激前後でABRに変化は認められなかった。 3.磁気刺激による顔面神経と三叉神経との関係に関する検討。 側頭部を磁気刺激し、眼輪筋より誘導すると40msec前後に両側性に反応成分を認めた。われわれは、正常者、顔面神経麻痺患者、MS、聴神経腫瘍患者に対して行い、この反応がBlink reflexのR2成分と同様の性格を持ったものであることを証明した。今後さらに症例を増やして検討する予定である。
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