研究概要 |
これまで落屑物質の成因に関する研究のほとんどは,電子顕微鏡を用いた形態観察にのみ基づくものであった.本研究の目的は,落屑物質の成因と考えられている物質に対し,レクチン,免疫電顕および生化学的手法を用いて,形態および成分の両面から検討を行うことにより,落屑物質の成因を解明することである. 本院における眼手術により得た線維柱帯組織,水晶体組織,皮膚組織,結膜組織を,直ちにロビクリルK4Mに低温包埋し,超薄切片を作製した後,18種類のレクチンで染色し,金コロイド標識を行った.各組織において,落屑物質,基底膜,毛様小帯,弾性線維,エラウニン線維,オキシタラン線維,エラストーシス,エラストジェネシス,膠原線維などの,線維性構造物についてのレクチン染色性を,電顕的に比較検討した.その結果,各構造物とも基本的には落屑物質と一致した染色性は示さなかったが,エラストーシスおよびエラストジェネシスは,超微形態,レクチン染色性が一様でなく,その中に形態および染色性が落屑物質にほぼ一致したものが存在した.従って落屑物質が,エラストーシスあるいはエラストジェネシスの中で産生される可能性が示唆された.これまで成因として,有力視されてきた基底膜については,形態学的には,基底膜から落屑物質が産生される様な所見が認められたものの,レクチン染色性がかなり異なっていた.同様に有力視されていた毛様小帯に関しては,染色性は類似していたが,形態学的な類似性に乏しかった. 本手法は,親水性の包埋剤であるロビクリルK4Mによる低温包埋法とコロイド金電顕組織化学を用い,より生体に近い標本での優れた染色性が得られる上に,上記の様な微細な構造物の,形態と成分を同時に比較することが可能な手技である.現在さらに,新たに作成した抗体,および既知の細胞外基質に対する抗体を用い検討中である.
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