歯科領域では歯牙硬組織の形成機序について様々な見解があるが、この際に関与するホルモンについての報告は非常に少ない。副甲状腺ホルモン様プロテイン(PTHrP)はCaの動態に関与することが知られており、PTHrPは歯牙の形成、骨の形成、吸収にも関与している可能性がある。そこで歯牙の形成、萠出に伴うPTHrPの遺伝子発現の検索を目的として本研究を行った。 ラットは開放根をもち、常に歯牙の形成、萠出が起こっている。そこでオスのSD系ラットを実験動物とし、麻酔下で上・下顎の切歯を歯頸部まで削合し、非接触状態とする。その後、歯牙の再萠出中、再咬合時、とグループ化し、経時的に歯牙を抜歯して、その歯髄を摘出する。さらにその歯髄を根端側と切端側に分け、各々の歯髄からtotal RNAをCsCl法により抽出し、^<32>PによりラベルされたPTHrPプローブを用いてNorthern blot analysisを行った。 この結果、正常ラット歯髄においても低レベルながらPTHrPのmRNAが発現していることが観察された。また、歯牙の削合後、1週間に渡り、PTHrP mRNAのレベルが次第に上昇し、その後下降することが示された。このことから、PTHrPは歯牙の形成、萠出に関連してその遺伝子の発現が起こっており、歯牙の形勢、石灰化、あるいは歯牙の萠出に伴う周囲組織のproliferation等にPTHrPが少なからず関与していることが示唆された。
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