5名のボランティアを用いた口唇低周波数電気刺激を行うも、ブラキシズムは全く抑制されず、そのいずれもが電気刺激を強くすることによって患者を覚醒させ、不快感を残すのみであった。しかし、予備実験では低周波電気刺激でブラキシズムが消失した症例も存在しており、メカニズムの解明を目指して、その電気生理学的な客観的な評価を行うべく以下の基礎実験も行った。被検者7例に筋疲労を生じさせないごとく弱収縮から最大噛みしめまでの様々な随意収縮レベルで行わせ、咬筋各々についてRMS値、単位時間当たりのターン数(Turn/s)、1ターン当たりの平均振幅(Amp/Turn)および平均周波数(Hz)を測定した。その結果RMS値が上昇するにつれてTurn/sも増加したが、その割合はRMS値が増大するにつれて低下し上に凸の様相を呈した。また、RMS値とAmp/Turnは比例関係を呈し、最小二乗法を用いたy切片(88.53±4.39)と傾き(1.74±0.05)は極めてばらつきの小さな値であった。さらに、同被験者に、10Nの咬合力で250sのブラキシズム様持続噛みしめを行わせ、10秒ごと300msecの区間データを収集した。各々のRMS(μV)値が47.3±33.7→102.5±52.1、Turn/s(/s)値が148.8±128.9→255.0±91.0、Amt/Turn(μV)値が170.7±63.7→238.7±92.4および平均周波数(Hz)170.3±27.2→150.1±20.0と有意に変化した。これを、非疲労時と比較したところブラキシズム様持続噛みしめ時にはこれよりかなりの偏位を示した。これより10N程度の持続的噛みしめ(ブラキシズム)の発現には、運動単位の発火頻度の増加および大きい運動単位の動員がともに寄与していることが考えられた。この基礎データをもとに今後は口唇低周波数電気刺激を行った症例との比較検討を行う予定である。なお、本研究の結果の一部は第27回日本口腔外科学会九州地方部会(長崎市)で報告した。
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