1)PCR法を用いたマボヤMHC部分遺伝子増幅の試み 魚、カエル、ヘビ等下等脊椎動物のMHCクラスIおよびIIのcDNA配列からよく保存されている領域を選び、PCR用のディジェネレートプライマーを作製した。マボヤ血球から総RNAを単離し、RT-PCRを行った。条件を種々検討したが、目的のサイズに相当するバンドはまだ得られておらず、さらに検討が必要である。 2)マボヤ血球の自己-非自己識別反応に伴い細胞培養液中に検出されるフェノールオキシダーゼ活性の回析 異個体のマボヤ血球を混合して培養すると、培養液中にフェノールオキシダーゼ活性が検出されるが同個体の血球培養液やカルシウムイオノフォアの刺激に応答してメタロプロテアーゼが遊離された血球培養液中には同酵素活性は検出されたなかった。また、本酵素活性は、酸、アルカリ、熱処理に不安定で、金属キレート剤、KCN、フェニルチオウレア等の阻害剤に強い感受性を示した。これらの性質は、昆虫の体液中に検出される活性型フェノールオキシダーゼの性質とよく類似している。現在、本酵素の精製を試みている。 3)自己-非自己識別反応に関連する細胞内情報伝達系の解析 自己-非自己識別反応は、異個体の血球が接触すると血球細胞膜表面で、自己と非自己の識別が行われ、非自己と認識されると、両方の血球が細胞崩壊を起こす反応である。この細胞崩壊を阻害する物質を検索したところ、細胞内カルシウム枯渇剤、いくつかのチロシンキナーゼ阻害剤により細胞崩壊が阻害された。しかし、PKC阻害剤である。H-7には阻害効果がなかった。このことから、自己-非自己識別後の細胞崩壊反応には、少なくとも細胞内カルシウムおよび、チロシンキナーゼが関与している可能性が示唆された。
|