研究概要 |
ブタ小腸粘膜由来のヘパリンをバクテリア由来の酸素で消化し、ゲロろ過によってサイズ分画した。さらに四糖画分は、ポリアミンカラムを用いたHPLCによってさらに細かく分画した。単離した各画分を酵素消化とHPLC分析を組み合わせて、構成二糖組成とその配列を決定した。最終的な構造の確認は500-MHz^1H NMR解析によって行なった。化学シフトの帰属は、二次元HOHAHA、COSYの手法を用いた。 今回構造決定した11成分のうち、6成分は単離の報告がない構造をしていた。また、そのらのうち2成分は、珍しいグルクロン酸2-硫酸構造を糖鎖内部に含んでいた。この構造は、亜硝酸分解物の二糖の解析からその存在が示唆されてはいたが、硫酸化の部位が3位である可能性は排除できておらず、このようにNMRで構造が証明されたのは初めてである。また、実際にグルクロン酸2-硫酸を糖鎖内部に含む四糖としての単離も初めてである。 ヘパリナーゼ、ヘパリチナーゼI、IIの三種類の酵素について、単離した四糖を用い、基質特異性を検討した。各酵素の従来知られている基質特異性は、多糖を分解したときに生じてきた主要な二糖やオリゴ糖の末端の糖残基の構造から推定したものであり、明確な構造を持ったオリゴ糖を用いて調べられたことはほとんどなかった。 ヘパリナーゼIとIIは、従来知られていた特異性から予想される通りの結果が得られ、従来の特異性を確認することができた。ヘパリナーゼは、従来GlcN(NS,6S)-IdoA(2S)という配列中のグルコサミニド結合に作用すると考えられてきた。しかし今回、2位が硫酸化されていれば、グルクロン酸でもイズロン酸でも作用し得るということが判明した。この結果、ヘパリナーゼもコンドロイチナーゼ、ヘパリチナーゼI、IIと同様に、切断部位でantiとsynのいずれの脱離反応も触媒できる珍しい酵素の一つであるとわかった。
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