"Affinity Cleaving"は核酸塩基配列の認識・結合と糖リン酸骨格の切断の大きく二つの過程から成り立っており、二つの機能を合わせ持つ分子の構築を目指す必要がある。研究代表者はDNA結合ドメインとして転写因子Splの3個の亜鉛フィンガー領域を適用し、これにDNA切断能を賦与する目的で、Gly-Gly-His(GGH)配列をZnフィンガーのN末端部に導入した。GGH配列は元来、血清アルブミン中の銅結合部位として見つかったものであり、N末端アミノ基、2個のペプチド結合、His側鎖の4個のN原子でCu(II)、Ni(II)と正方平面型錯体を形成する。GGH-Ni(II)錯体はDNA上の適切な位置に置かれると、モノパーオキシフタル酸の存在下で酸化的にDNA切断をすることができる。このリガンドは天然型アミノ酸であるため、遺伝子工学的に導入できるという非常に大きな特徴を持っている。但し、金属を配位させるには、GGHのN末端がNH_2基である必要がある。そこで、予めプロテアーゼ認識部位をGGH配列の直前に組み込んでおき、前駆体蛋白質として調整後、プロテアーゼ処理により、目的とする蛋白質、Sp1GGHを単離することができた。Sp1GGHはDNAのGCbox配列に結合し、そのNi-GGHドメインが先の酸化剤の存在下、GCboxから4塩基離れた位置を中心にDNAの両方の鎖をほぼ一ケ所で極めて選択的に切断した。この方法は化学合成の過程を一切含まない最初の成功例であり、遺伝子工学の手法として一般化できる可能性を秘めている。今後、Cys_2His_2型ZnフィンガーによるA/T認識機構等のモジュール化が解明できれば、より精緻な"Znフィンガーヌクレアーゼ"のde novoデザインも可能になると期待される。
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