研究概要 |
新規の大環状テトラアミン亜鉛錯体を合成し,以下のような化学事実を数多く発見し,亜鉛酵素反応の化学的機構解明および新医薬品の開発に多大の成果をあげた。 1)腎臓ジペプチダーゼやβ-ラクタマーゼIIの活性中心をモデル化した亜鉛錯体を合成した。 2)亜鉛酵素モデルとこれまでに知られた各種亜鉛酵素インヒビター(カルボン酸、フォスフェート、スルフォンアミド、イミドなど)との錯体形成反応について、NMR、各種分光法(CDやUV)、pH滴定法、X線結晶解析などを用いて詳しく検討を行った。 3)2により得られた知見を考慮し、亜鉛酵素モデルのβ-ラクタム抗生物質分解反応の各種亜鉛酵素インヒビターによる阻害反応について検討した。 以上の成果は、新規β-ラクタム不活性酵素阻害剤に必要な化学構造の推定を可能とし、簡単な構造を持つ新規阻害剤の開発のための指針を与えた。阻害反応中間体の構造解析やそれらの定量定性分析などの活性構造化学的研究を進めた結果、β-ラクタム加水分解反応の特異性をいくつか解明することにも成功した。さらに、このモデル研究を発展させて、セリン亜鉛酵素内のアルコール性水酸基の化学的役割について検討する目的で新規のモデル錯体を合成し、様々な化学的事実を見い出した。
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