1 モルモットを用いて、オレイン酸肺傷害の際に生じる肺血管の透過性亢進を気管、主気管支、近位気管支、遠位気管支の各部位で調べた。その結果、すべての部位においてオレイン酸の投与量および投与後の経過時間に依存した肺血管透過性の亢進が見られ、ガス交換の場(またはその近位部位)である遠位気管支領域において、最も著明な亢進を示した。これより、オレイン酸による肺血管透過性亢進は主に間質および肺胞に浮腫を引き起こしガス交換に影響を与えている可能性が示唆された。 2 オレイン酸15μl/kgによる血管透過性の亢進に対する、好中球抑制作用を有するペントキシフィリン、抗プラスミン薬トラネキサム酸および血管透過性亢進抑制作用を有するアドレノクロムの影響について調べた。その結果、オレイン酸による肺血管の透過性亢進をペントキシフィリンおよびトラネキサム酸は近位および遠位気管支領域で、アドレノクロムは気管、主気管支領域において有意に抑制し、オレイン酸肺傷害における好中球および線溶系の関与が示唆された。また、上記薬物がオレイン酸により誘発される動脈血酸素分圧低下を抑制する機序として、血管透過性亢進の抑制が重要な役割を果たしていることも示唆された。 3 モルモットにオレイン酸15μl/kg投与90分後、気管支肺胞洗浄を行い気道内へ浸潤した多形核白血球数を生理食塩液投与群と比較した。その結果、オレイン酸投与群の多形核白血球数は生理食塩液投与群よりわずかに増加していたが有意差は見られなかった。これより、15μl/kgのオレイン酸による肺傷害の初期段階では多形核白血球は血管外に滲出するが、肺細胞にまでは浸潤していないことが明らかとなった。
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