研究概要 |
【研究方法および結果】 1、株化細胞の作成;SV40-T抗原の温度感受性(ts)変異遺伝子を受精卵に導入してトランスジェニックマウスを作出した。実体顕微鏡下で各ネフロン分節を無菌的に単離し培養に付した。各ネフロン分節由来の培養細胞株が得られ、その増殖は温度感受性の増殖様式を示し、継代を重ねても上皮様の形態は保たれていた。2、株化細胞の機能解析、1)ホルモンの応答性;VasopressinによるcAMPの産生増加は、近位尿細管で反応がなく遠位および集合尿細管で産生亢進をみとめ、新鮮ネフロンの形質が保たれていた。2)近位尿細管特異酵素の発現;近位尿細管特異酵素のであるALP,γ-GTP,LAPの発現も、新鮮ネフロン同様、近位尿細管終末部(S3)細胞で高く髄質外層部集合管(OMCT)細胞では陰性であった。3、各種薬物のフリーラジカル産生、1)シスプラチン;尿細管細胞は濃度、時間依存性に障害され、OMCTに比べS3で過酸化脂質(LPO)の産生は亢進していた。この結果は、今までのin vivoの結果を補完するものであった。2)パラコート;S3に比べOMCTでLPO産生は亢進していた。その原因として、OMCTではS3に比べ内因性SOD活性が低下していることが考えられた。3)6価クロム;S3細胞浮遊液に6価クロムを添加しスピントラップ剤(DMPO)を加えESRで観察するとヒドロキシルラジカルがみられた。そしてこのラジカルのシグナル強度は、SODを前処置すると減弱し、DFOによって完全に抑制された。 【考察と今後の課題】今回我々の樹立した培養細胞株は、由来部位がはっきりし、かつ新鮮ネフロンの有する機能が保たれていた。この細胞は、フリーラジカル産生や消去能を有する各種薬物のスクリーニングに有用であると思われた。
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