研究概要 |
本研究は,日本における大量水揚漁港を中心とする水産関連空間の構成を,技術革新に着目しつつ,地理学的な原理によって説明することを最終目的としている。今年度は,境漁港に関する研究資料を現地で収集するとともに,中断していた銚子漁港に関する論文1編を完成させた。 境漁港に関しては,予備調査が終了し,本格的な地域調査の段階に入った。今後は,主要な水揚げ魚種であるイワシ類,サバ類,アジ類,カニ類,イカ類の流通と関連業者の機能を中心に,さらに質詳細な地域調査を行い,境漁港を中心とする水産関連空間を明らかにする。境漁港は,調査をこれまでしてきた銚子漁港と同様に,日本の近海旋網漁業の代表的な基地である。銚子漁港での調査結果を参考に,両者の水産関連空間を詳細に比較し,1980年代における日本の水産業の地域的特徴を解明していきたい。 銚子漁港に関する論文は,その周辺地域での技術革新に伴う水産加工地域の形成に関するものである。銚子における水産加工・流通の中心技術は,水産物の冷凍・冷蔵技術であり,その近代化は1965年頃から1972年頃にかけて進展した。これは,銚子漁港において水揚げ量が急増する以前のことであり,大量水揚げを準備するものとなった。銚子における主要な水産加工場の集中地域は,その後のマサバとマイワシの銚子漁港における水揚量の造影に伴って形成された。その大規模な水産物冷凍冷蔵庫群は,マイワシとマサバとサンマの水揚げの季節性と大量性を解消し,その各用途先へ周年的な安定供給を可能にする施設として可能している。
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