報告者の以前からの研究開発の延長として、英語教育への応用を目的としたビデオ映像と音声のデジタル化とデータベース化、およびそれを利用した教材の開発を行った。概略以下の手順で行った。 1)データベースの基礎資料として、英語話者4名(米国人男女各2名)を起用してビデオ教材を撮影した。これはただ単に日常会話を中心にしたものだけではなく、文法、語法に関する知識を語用論的観点から実際の使用場面の例を通して無理なく理解させるものと、教材作成の材料としての再利用性の高い断片的表現を収録している。 2)映像音声をデジタル化する高度な機能を持ったパーソナルコンピュータを導入し、作成したビデオ教材の動画と音声を同期させた状態でデジタル化してデータとして光磁気ディスクに記録した。デジタル化の規格にはQuick Timeを利用した。 3)この動画データをデータベースとして利用した会話学習教材Quick Dialogその他を作成した。作成にはApple Macintoshで動作するHyper Cardを利用した。この教材は、ただ会話の表現と手順を練習するだけでなく、その背後にある一般的知識を探索的に学ぶことができるように留意してある。 4)作成した動画・音声データのすべてと開発したQuick Dialogなどの教材を、報告者がこれまでに単独あるいは共同で開発してきた語学学習用CAI教材すべてとあわせてCD-ROMに収録した。このCD-ROM(Stack Network Project CD-ROM Vol.1)は300枚製版され、報告者が今後の実験用に保持する以外はすべて国内外の研究者に無償提供する。 今後はQuick Dialogなどの教材利用する際学習者がどのような知的興味をもって探索を行なうか実験する。この実験では、特に学習者の探索の道筋と教授者側の用意した情報の体系との間の関係(ずれ)の有様を解明することを目的とする。その結果を元に、この種の語学学習用データベースにどのようなデータ構造と操作系を用意すべきか検討する予定である。
|