本研究では、計画にしたがって以下のようなことをおこなった。。 1.日本人話者16名を対象に、平成4年度に科学研究費奨励研究(A)の助成を受けて「外国人留学生の日本語談話レベルでの誤用分析研究」という課題で留学生に行った実験方法を用いて、様々なトピック型(因果関係、時間的順序など)の発話データを収集した。収集方法は、個別面接形式で各被験者に対し、12問の質問を用意し、それに対する回答をデータとした録音した。被験者16名の選定については、以下のような点を考慮し、本学の教職員に協力を依頼した。 (1)世代(30代、40代、50代) (2)集団の前で話すことに慣れているかどうか(事務職員 対 大学教員) (3)教員グループの中で理数系か人文系か 2.1.で得られた録音資料は、専門業者に依頼して文字化、およびコンピュータ入力したが、そのための費用が、予定した金額よりも大幅に安かったために、被験者数を増加して再度実験を行うことにした。今回も、先述のような条件を考慮して、本学教職員10名に協力を依頼した。 3.さらに、先回の実験に協力してくれた留学生のうち5名に再度連絡をとり、個別面接形式で、以前と同じ質問12問について再度実験を行った。この実験により、当初の計画の留学生対日本人という比較分析に加えて、計画にはなかった留学生自身について日本語習得の経時的な追跡調査が可能になった。 4.2.および3.で得られた資料も文字化およびコンピュータ入力を行い、文字資料のデータベースを作成した。今後は、ひきつづき日本人発話データべ-スを用いて、発話が文法的にどのような方法(例:接続詞表現の使用/同一語句の反復など)で文と文を結束しているか、トピック型ごとにどのように展開されているか、そこに一定の「談話の型」が存在するかなどについて分析・検証する。また同様な視点で、先回収集した留学生の発話データを再分析し、日本語母国話者との比較を行う。さらに、追跡調査で得られた留学生のデータを先回のデータと比較し、談話レベルでの日本語能力の発達過程についても検討を行う。
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