1.疑似酸性雨曝露実験…実験はモルタル柱状試料(直径5cm×高さ10cm)にpH3、4.7の疑似酸性雨と純水を5mL/minで2時間曝露した後、pH3は放置および乾燥(70℃で4時間)という条件で、pH4.7と純水は放置条件のみで行った。pH3の疑似酸性雨のモルタル接触後の溶液pHは、ほぼ一年分の降水量に相当する曝露後5日目から3.2付近で一定となり、pH4.7と純水ではpH3と比べると溶液pHは高く、純水に比べてpH4.7の溶液の方がわずかに低いpH(約pH6.3)を示した。一方、モルタルからのCa積算溶出量はpH4.7と純水でほぼ同程度であるが、pH3の条件では圧倒的に多く、90日後にはpH4.7と純水に比べて5〜6倍となった。なお、この時のCaの溶出速度はpH3で3.32mg/day、pH4.7で0.632mg/dayであった。モルタルの中性化は酸性度が高い程進行するが、pH3の疑似酸性雨では放置条件(3.7mm)に比べて乾燥条件(5.5mm)では90日間で約1.5倍促進されることが明らかとなった。また、曝露液量が同じ場合には、降雨強度が小さいほどCa、Siの溶出量は増加するが、中性化はほとんど促進されなかった。 2.疑似酸性雲(霧)曝露実験…平均液滴径10μm以上のpH3の酸性霧を曝露した後(一回に2L/hrで2時間)に放置および乾燥するという条件を1サイクルとして合計30回行ったところ、中性化深さはそれぞれ1.63mm、0.83mmであり、いづれもpH3の酸性雨を曝露した時(それぞれ1.33、0.67mm)に比べて中性化が促進されることが明らかとなった。 3.大気曝露実験…モルタル試料を乾性降下物のみ、乾性と湿性降下物の両方の2条件で屋外に曝露した。1年後の中性化深さは乾性降下物と乾性+湿性降下物の曝露条件でそれぞれ2.6、1.1mmであり、乾性降下物のみの方が約2.5倍中性化が進行していることが分かった。また、曝露表面のNO_3^-、SO_4^<2->含有量も測定したところ乾性降下物のみの方が高く、大気中の酸性ガスと反応してCa(NO_3)_2、CaSO_4などの腐食物が生成している可能性が示唆された。
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