この研究は、ヒトという生物により適合性の高い視覚的環境造成に貢献しうる知見を得る事を目的とした基礎的研究である。特に、自然景観と都市景観との光学的物理構造の違いを客観的に表現しうる指標について、その候補として適合性が高いと推測される光濃度ヒストグラムの分布の一様性というあたらしく提案を行ったパラメータに関して検討を進めている。 平成6年度において、設定した課題と検討成果を以下に述べる。 1.景観画像の収集 自然性の高い景観のモデルとして、人為加工の影響から保護されており、人類が種として誕生したとかんがえられる熱帯降雨林地帯に属するパナマ共和国バロ・コロラド島のジャングルの風景を選択した。また人為加工性の高い景観のモデルとして、東京新宿のJR新宿駅西口の地下道の風景を選択した。および、自然性と人為加工性との観点から、上で述べた二つの景観(新宿とパナマ)の中間的な景観とかんがえられる、中間的な景観として、インドネシアバリ島のライステラス(棚田)の風景を選択した。 2.景観画像の光学的分析 1.で選択した3種類の景観について光濃度分布の一様度を高速に算出するUNIX上で機能するプログラムの開発に成功し、景観資料の分析を効率的に行う事が可能になった。 3.景観画像の光学的パラメータによる生体への影響評価実験を、脳波α波を生理指標として6名の被験者を用いて実施した。その結果統計的有意性を得るにはいたっていないが、やはり、光学的濃度分布の一様度の高低と比例関係にあることを示唆するデータを得ることができた。 3.次年度以降の研究課題 今回見出された濃度分布に偏りを持つ景観と同じ位置様度分布をもちながらも、ランダムなパターンを製作して実験を行いたい。
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