高い感度と分解能の得られるマジック角試料回転条件下の固体分子について、距離情報だけでなく二面角など角度情報を多次元NMRを用いて得ることを試みた。この方法は、核スピン間で磁化を移動させることを通じて、異なる原子の異方的な核スピン相互作用の相対的な配向を決めて角度情報を得ようとするものである。実験の中心的な部分は二次元NMRであり、異なった核スピンの異方的相互作用の展開を磁化移動の期間で結びつけたものである。これによって異なった核の異方的相互作用についての二面角に依存する相関スペクトルが得られる。この実験を実現するためにマジック角試料回転条件で異方的な相互作用を測定するための新しいラジオ波パルス列を2種開発した。一つのパルス系列はCHあるいはNHなどの双極子相互作用が高速試料回転下でも有効に働くようにしたもので、もう一つは化学シフト異方性が働くようにしたものである。この開発にはコンピュータによるNMRシミュレーションを用いた。実験用のラジオ波多重パルス系列は、オフセットやラジオ波の不均一性によって実験結果が影響されず、感度が高く二面角に敏感になるように設計した。実験では、この方法を^<13>Cでラベルしたアミノ酸に適用し、タンパク質の主鎖に相当する二面角を決めることを試みた。現在、実験結果がシミュレーションとよく一致しているという結果が得られている。
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