これまで同定されていた動原体蛋白質とは明らかに異なる分子量(約12万ダルトン)を持つ動原体蛋白質について、その構造を明らかにするために、蛋白質の精製・抗体の作成・ヒト精巣の発現型cDNAライブラリーのスクリーニングをおこなってきた。独立に作成された2種類のヒトcDNAライブラリーを、徹底的にスクリーニングした結果、得られた最長cDNAクローンの大きさは約2.2kbであった。塩基配列を決定したところ、このクローンはmRNAのポリ(A)配列を含む3′側から由来することが判明した。RNAブロットハイブリダイゼーションから推定されるmRNAサイズは3.6kbであるため、5′側の約1.4kbがまだ未回収と考えられた。上記の最長クローンも含めてcDNAライブラリーのスクリーニングから得られたクローンの多くは、コーディング鎖側のグアニン残基に富む領域でcDNAの伸長が停止しており、この領域を越えるものは見いだせなかった。したがって、mRNAのこの領域には、逆転写酵素の伸長合成を阻むような2次構造が存在するものと考えている。今後、耐熱性DNAポリメラーゼのいくつかに見いだされている逆転写活性を利用して、この領域よりも5′側のcDNAをクローン化し、問題の蛋白質の全構造を明らかにする予定である。
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