研究概要 |
本研究報告者はこれまでに,フーリエ変換した磁気共鳴信号のウェーブレット係数を用いて ・被写体(患者)の動きが検出できること, ・体動アーチファクト(偽像)削減への応用の可能性があること を理論的に示した.ただし,許容される体動のクラスはウェーブレット変換の時間・周波数分解能に依存し,数値実験を通してこの問題を検討することが必要である.本研究において,被写体の動きとして,位相エンコード方向へのステップ状の移動を想定し,移動の時刻と量を変化させて計算機実験を行った.これにより,本手法に関して以下の項目が明らかとなった. 1.ウェーブレット変換に用いるマザ-・ウェーブレットは,モレ-(Morlet)のウェーブレットが最も望ましいこと. 2.磁気共鳴信号が繰り返し方向に関して対称性の性質を持つことを利用したウェーブレット係数領域での修正が,体動アーチファクトの削減に有効であること. 3.移動時刻が全撮像時間の1/2付近である場合,アーチファクト削減の効果が小さくなる現象が生じること.これは,スピンワープ法により得られる磁気共鳴信号が持つ性質に起因している. 上記3.を回避する方法の開発は今後の課題であるが,全体としてほぼ期待通りの結果が得られた.現在,実際の核磁気共鳴画像装置を用いた実験の実施を計画している.
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