研究概要 |
本研究は,日本学術振興会外国人特別研究員であるKenneth J.Shackleton氏と共同で,曲面のタイヒミュラー空間の大域幾何の理解を深め,3次元多様体の研究への応用,とくに写像柱の体積との関係について知見を得ることを目指している.今年度は最終年度で,しかも8月一杯でShackleton氏が特別研究員から離任したため期間が短かったが,日常的な研究打ち合わせを行い,タイヒミュラー空間のヴェイユ・ピータンソン幾何に関する理解を深めることができた.とくに,擬アノソフ写像のエントロピーと対応する写像柱の体積は,幾何の有界性を仮定すれば比較可能であることが証明できた。 一方,Shackleton氏自身はパンツグラフ上の2点間の距離は計算可能かという大目標に取り組んでいるが,前年度末にほぼ完成させた2点穴空きトーラスと5点穴空き球面についての証明を精査し,論文を完成させるべく議論のポリシュを図った。また,その過程で自らたどり着いた「パンツグラフの中で自然に定義される余次元一定の部分グラフは前測地的」という予想に取り組み,地に足の着いた進展を得ている。 これらの業績が評価され,Shackleton氏は東京大学の数物連携宇宙研究機構(IPMU)のポスドクに採用され,昨年の10月半ばから日本での足掛け4年目の研究生活を始めている。
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