研究概要 |
・Yb_<14>MSb_<11>(M=Mn,Zn)の熱伝導率では格子の寄与が支配的である。M=Znの負の熱電能のピークはYbが価数揺動領域にあることを意味する。 ・CePd_5A_<12>を初めて合成し,局在4f電子が強い一軸磁気異方性を示す反強磁性体であることを発見した。 ・Sr_8Ga_<16>Si_<30-x>Ge_xのカゴ体積はGe組成xの増加により3%増える。これに伴う格子熱伝導率の減少とゲストの振動エネルギーの低下とが強く相関することから,低エネルギーの非中心ラットリングが音響フォノンの散乱源であると結論した。 ・Ba_8Ga_<16>Sn_<30>のα相とβ相の単結晶育成に始めて成功した。β相の14面体中でBaは中心から0.43Åもずれた四つの位置を占める。低温の格子熱伝導率はタイプIクラスレートの中で最も小さい。その原因は,分裂サイト間のBaゲストのラットリング/トンネリングが音響フォノンを激しく散乱するためであると結論した。 ・超音波実験によって,Ba_8Ga_<16>Sn_<30>(α相),Sr_8Ga_<16>Ge_<30>,Eu_8Ga_<16>Ge_<30>では特定のモードの弾性率,超音波吸収において,数十Kで超音波分散を観測した。Ba_8Ga_<16>Sn_<30>(β相)では,全てのモードの弾性率,横波のモードの超音波吸収で超音波分散を観測した。この分散をラットリングに起因するとしてデバイ型モデルで解析し,それぞれの物質の特性となる緩和時間や励起エネルギーを決定した。 ・タイプIクラスレートの熱伝導率を統一的に理解するために,14面体中におけるゲストの可動長という量を導入した。既報17種類の化合物の150Kでの格子熱伝導率は,可動長が増大するにつれて直線的に減少することが判明した。この普遍的な関係は,ラットリングが格子熱伝導率を抑制していることを支持している。
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