研究概要 |
7種類の神経ペプチドBombesin(BN)6-14 c-terminal fragmentsと銀コロイド表面との相互作用を表面増強ラマン散乱(Surface-enhanced Raman scattering;SERS)を用いて調べた。得られた7種の試料のSERSスペクトルを詳細に解析して、"surface selection rules"を用いてBNのどの部分が銀表面に吸着しているか、配向はどのようになっているかについて調べた。次に、BNが粗い銀電極表面に吸着した場合と銀コロイド表面に吸着した場合では、その吸着部位や配向かどのように異なるのかについて検討した。昨年度実施した粗い電極表面の場合には、BNはTrp^8リングのπ電子系、このリングの窒素原子の孤立電子対、Trp^8のメチレン部分、C=O基、Gln^7とTrp^8の間のアミド結合によって銀表面と相互作用していることを明らかにした。今回の銀コロイド表面の場合は、cyclo[D-Phe^6,His^7,Leu^<14>]BN^<6-14>,[D-Phe^6,Leu-NHEt^<13>,des-Met^<14>]BN^<6-14>,[D-Phe^6,Leu^<13>-R-p-chloro-Phe^<14>]BN^<6-14>,[D-Phe^6,β-Ala^<11>,Phe^<13>,Nle^<14>]BN^<6-14>については粗い電極表面と同じような相互作用をしている事がわかった。しかしながら、[D-Cys^6,Asn^7、D-Ala^<11>,Cys^<14>]BN^<6-14>ではTrp^8のベンゼン環が、[D-Tyr^6,β-Ala^<11>,Phe^<13>,Nle^<14>]BN^<6-14>と[D-Tyr^6,β-Phe^<11>,Phe^<13>,Nle^<14>OH]BN^<6-14>とではD-Tyr^6が配向に重要な役割を果たしている事が分かった。このように、銀表面の違いが神経ペプチドの配向に大きな影響を与える事が分かった。上記の研究に続き、神経ペプチドのSERSの機構、配向についてより詳細に調べるために電磁場計算ソフトFDTD Solutionsを購入し、それを用いて神経ペプチドのモデル化合物について電磁場増強の程度を調べた。
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