研究概要 |
マレーシアサバ州にはソゾの仲間の紅藻が多種存在する。これらの藻類は、魚類や軟体動物などの捕食者による食害を受けずに繁茂している。また、微生物による汚損も逃れている。ソゾの仲間には化学防御物質が含まれることが予想されたので、採取地を変えて、7つの系統にふくまれる成分の検索を行った。まず、Laurencia nipponicaの抽出物を液液分配、順相および逆相クロマトグラフィーにより、そこに含まれる二次代謝産物を徹底的に単離し、核磁気共鳴および質量分析に付し、化合物の構造決定を行った。その結果、laurencin,isoprelaurefucin,kumausallene,laureatin,prepacifenol,epilauralleneなどのポリケタイドやセスキテルペノイドを同定することができた。これらの化合物は、陸上起源の微生物に対してより、海洋微生物に対してより顕著な抗菌活性を示した。 同じくソゾの仲間のLaurencia majusculaについて、4カ所の生息地から外見の異なる6系統を得て、それらの含有成分の検索を行った。これらの系統は、化合物組成により2つに分けられることが判明した。すなわち、ひとつの系統はisoobtusolとdibromochloro-epoxychamigreneを主成分として含む。他方の系統はelatolとaplystatinを主成分とする。これらの化合物はいずれも環状のセスキテルペンで、海洋バクテリアに対して顕著な抗菌活性を示す。 サバ州沿岸に多数生息するソフトコーラルに含まれる、海洋微生物に対する抗菌性物質の検索も行った。抽出物を液液分配、順相および逆相クロマトグラフィーにより分画したところ、多数のジテルペンが得られ、これらは機器分析データからセンブレン骨格を持つことが判明した。
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