研究概要 |
平成20年は,空間周期的係数をもつ1次元単安定型拡散方程式の進行波の速度を最大化する係数を決定する研究を完成するとともに,その結果を空間2次元に拡張する研究を行った. 具体的には,空間周期的な縞状パターンをもつ2次元媒質内を伝播する進行波の速度を最大化する係数を決定するとともに,波面が周囲に広がる際の,各方向への「広がり速度」(spreading speed)と成長する波面の「漸近形状」(asymptotic shape)を調べた.その結果,各方向への広がり速度は,係数が周期的帯状に並んだ平行直線族上の線測度である場合に最大になることが示され,また,波面の漸近形状も,隣り合う帯の間隔が非常に狭いとほぼ円であり,非常に広いと二つの放物線の先端部をつなぎ合わせた形状になることが証明できた.この研究には,偏微分方程式に関する通常の解析的手法に加えて,無限次元の順序保存力学系の理論が重要な役割を演じた. なお,空間1次元の研究成果は,Trans.Amer.Math.Soc.に掲載が決定した.空間2次元の研究成果は,投稿準備中である.
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