研究課題
特別研究員奨励費
本年度前半には英国ロンドンへの研究調査出張を行い、大英図書館に所蔵されている十一世紀北スペイン由来の諸写本の実見調査、ウォーバーグ美術史研究所での文献収集ならびにコートールド美術史研究所のウォーカー博士との面談を行った。年度の後半にはフランス国パリヘ出張し、フランス国立図書館や国立美術史研究所付属図書館での研究調査を行った。また同市の社会科学高等研究院歴史学研究所において、装飾写本をはじめとするフェルナンド一世とサンチャ王妃の治世の芸術全般に関する試論を発表した。以上の調査・研究によって、本研究の対象であるフェルナンド一世とサンチャ王妃の注文作、四写本のうち、十一世紀にスペインへ到来したロマネスク様式による挿絵はごく少数であり、写本の装飾の大半は十世紀以来の伝統的なモサラベ様式によっていることが確認できた。こうした保守性は写本のテキストや書体の選択においても認められる。さらに、写本のみならず、彼らが建立したレオンのサン・イシドーロ聖堂のプランにも、西ゴート王国やアストゥリアス王国以来のスペインの建築の伝統が顕著に反映されている。したがって、フェルナンド一世とサンチャ王妃の芸術政策においては「スペインの伝統を重視する王」としてのイメージを確立することが重要視されていたと考えられる。そのため、彼らが外来のロマネスク様式をスペイン北部へ積極的に導入したという従来の見解は修正されるべきであるとの結論を得た。
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『美術史』 第163冊
ページ: 16-37
40015699910
Rincon Garcia, W.(coord.), Arte, poder y sociedad en la Espana de los siglos XV a XX
スペイン・ラテンアメリカ美術史研究 十周年記念特別号
ページ: 29-37
Archivo Espanol de Arte vol.79, n.゜315
ページ: 340-341
Archivo Espanol de Arte vol.79, n.゜316
ページ: 453-454