研究概要 |
現在販売されている多くの殺虫剤には,すでに抵抗性昆虫が出現しており,新たな殺虫剤の開発は急務である.しかしながら,農薬に対する風当たりは厳しく,より安全性の高い環境負荷の少ない農薬の開発が必要とされた.現在市販されている多くの殺虫剤は,作用点同じくするものが多く,交差抵抗性を示すものもある事から,新たな作用点の発見が必要とされた.昆虫特異的ホルモンである幼若ホルモン(JH)受容体の同定を試みた。これまでの研究結果より、卵濾胞にJHと特異的に結合する蛋白質が有ると考えられた事から濾胞を分画し,[H3]JH IIIに対する結合活性を検討した結果、確かに濾胞にJH IIIに特異的に結合する蛋白質が有る事を明らかにした。そこで、卵濾胞のJH結合タンパク質の同定を行うため,ビオチン化JHアナログの設計を行い、合成を九州大学と共同で行なっている.ビオチン化JHアナログの合成が出来次第、BIAcoreを用いてJH結合タンパク質を精製する予定である. JH結合蛋白質(JHBP)はJHと特異的な結合をする事からその類縁遺伝子(JHBP-r)の中にJH受容体があるかもしれないと考え,JHBP類縁遺伝子の網羅的解析を行った.カイコゲノムデーターべースからJHBPアナログがSaitoらにより9種報告されたが、その詳細な発現変動やJHに対する結合能は明らかではなかった.そこで,Saitoらにより報告されたJHBPアナログを全て再クローニングし発現機能・発現変動解析を行った.その結果,JHに対する結合能は認められなかった事から,JH受容体ではないと考えられるが,JHBP-rは時期組織特異的な発現変動を示した事から,これらの遺伝子は新たな農薬のターゲットとなりうると考えられる.そこで、昆虫の成育にこれらの遺伝子は必須なのか検討するため,JHBP-rのdsRNAを過剰生産するトランスジェニック蚕を作出し観察中である.
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