研究概要 |
1.スピノザ心理学における目的論の位置づけ;スピノザ『エチカ』における目的論の扱いを考察した。彼の目的原因論批判は目的論全般の否定とは区別されなければならないこと、また彼の体系において目的論は排除されているのではなく、むしろその心理学の根本をなしていることを、彼の目的論を個物について成立する法則的言明として解釈することにより示した。 2.生物学的な機能に関する問題;生物学の哲学において議論が交わされている二つの機能解釈、すなわち起源論的機能と因果役割機能について、それぞれの批判を検討したうえで、それぞれは互いに相互背反な関係にあるのではなく、生物を理解するための二つの異なったアプローチを示していることを明らかにした。 3.目的論全般に対する考察;現在主流である、目的論の因果的な由来による解釈(etiological view)に対し、目的論の本来的な役割は事物の因果的基盤に関するのではなく、むしろ対象を現象論的・統合的に説明する方式であるという、異なった目的論解釈を示した。 4.古生物学での機能推定に関する考察;機能推定メソッドとして古生物学で用いられている「パラダイム法」を,3の考察に基づき形質を統合する目的論的な説明とみなした上で,その説明仮説の真偽を,その仮説がどの程度データを説明するか(尤度)に基づき,ベイズ的手法にのっとって判定する,というアイデアを示した。
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