研究概要 |
孤立緑地におけるコケ植物多様性保全手法の提案を目指して,「都市内復元型ビオトープにおけるコケ植物フロラの変化」と「京都市におけるコケ植物外来種;Tortula pagorum(Milde)De Not.の生育分布に関する研究」の2つの研究を主に行った。以下,これらの研究の要約を示した。 都市内復元型ピオトープにおけるコケ植物フロラの変化 本研究では京都市内の孤立緑地を調査地として,コケ植物のフロラの変遷に着目して,市街地に新しく造成された緑地が自然性を獲得していく過程を明らかにすることを目的とした.調査地の2002年と2007年のコケ植物フロラを比較したところ,本調査地におけるコケ植物の侵入・消失は,生育基物の種類や面積によって左右されることガまた,コケ植物の生活史やニッチ,無性生殖の有無も関係することが明らかとなった.さらに,コケ植物の初期遷移パターンは,他の植物分類群のものと異なる可能性も示唆された. 京都市におけるコケ植物外来種;Tortula pagorum(Milde)De Not.の生育分布に関する研究 本研究では京都市内の孤立緑地を調査地として,外来種のコケ植物であるコモチネジレゴケの生育環境,および在来種のコケ植物に与える脅威について考察することを目的とした。その結果,京都市内において本種が広範囲で生育していることが確認され,本種は山地から離れた孤立緑地に侵入している実態が明らかになった。また,本種の在来種への侵入状況を観察した結果から,現段階では在来種のコケ植物の大きな脅威になっていないと判断された。しかし,その脅威を正確に評価するためには,長期的な本種の生育分布動態のモニタリングが必要であると考えられた。 コケ植物生育分布と環境要因との関係を定量的に明らかにした一連の研究成果は,コケ植物の生育実態の把握やその多様性の保全に貢献することが期待される。
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