研究概要 |
タンパク質にジスルフィド架橋を導入する仕組みについて、化学機構とその立体構造にもとづく作動原理を解明した。ジスルフィド結合形成が、細胞で効率よく起こるためには特異的な装置による助けが必要である。大腸菌のDsbAは、直接基質タンパク質のシステインペアを酸化する可溶性ペリプラズム酵素である。我々は以前に、呼吸鎖成分がDsbB機能に必須であることを発見し、BardwellらはユビキノンがDsbBを直接活性化することを示した。我々はキノンはDsbBのCys41-Cys44ペアを特異的に強く酸化すること、DsbBに結合したキノンが電子状態の遷移をおこし、ピンク色(λmax=500nm、ユビキノンの場合)あるいはすみれ色(λmax=550nm、メナキノンの場合)に発色することを発見した。この現象は、DsbBによるDsbA酸化反応中に一過的にみられ、Cys44が還元・チオレート状態となることが原因である。理論化学シミュレーションの結果、Cys44チオレートとユビキノンが電荷移動錯体を形成し、DsbBのArg48の正電荷によって安定化されていることが示され、さらにCys44とユビキノン間に共有結合・付加生成物が生じることも予測された。結晶構造解析により、Cys41,Cys44,Arg48の近傍にユビキノンのキノン環が配置された「ジスルフィド結合創生の反応中心」を同定した。Cys44-キノン電荷移動錯体・付加生成物がCys41による求核攻撃を誘起することによって、Cys41-Cys44ジスルフィド結合が創生されるとの化学メカニズムが強く示唆される。
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