研究概要 |
固体高分子形燃料電池の触媒は、カーボンナノ粒子と白金ナノ粒子から成るナノシステムで、白金の成長に伴う触媒性能の低下が問題となっているが、劣化機構は未解明である。本研究では、ナノ粒子の特異現象を観察する視点から、燃料電池触媒の劣化機構の解明を目的とした。 燃料電池の運転環境(80℃)を再現した加熱炉の中で触媒を長時間加熱し、透過型電子顕微鏡観察により、カーボンナノ粒子が構造変化することを見出した。この構造変化が白金ナノ粒子の移動に寄与し、これが白金成長要因の一つであることを明らかにした。これらの内容については、2006・Fuel Cell Seminar,2006・日本物理学会年次大会,2006日本物理学会秋季大会にて発表し、また論文にまとめて、Japanese Journal of Applied Physics (Vol.45, No.12, 2006, pp.9272-9275)に掲載された。 一方、真空蒸着法で作製した白金/カーボンのアモルファス混合薄膜における電顕中加熱実験から、カーボン中において、原子オーダーの白金が400℃以上で著しく拡散することを見出した。この知見をもとに、燃料電池触媒でも原子オーダー白金が含まれていることを明らかにし、拡散した白金がその他の白金の成長要因となっていることを見出した。このような現象は、燃料電池の作製プロセスで主に生じることを示した。この内容は、2006・Fuel Cell Seminarで発表し、論文として、Japanese Journal of Applied Physicsで採録が決定している(巻号等未定)。 さらに、電池自身の作る電場もカーボンの構造変化と白金の成長要因になっていることを見出した。この内容は、2006・Fuel Cell Seminar,2006・日本結晶成長学会にて発表を行った。 ナノ粒子ハンダについては、追加実験中である。
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