研究概要 |
気泡のまわりに如何なる流れ場が誘発されてレイノルズせん断応力を低下させるのか,という現象論上の因果関係を可視化実験によって解明することが本研究の目的である.特にレイノルズせん断応力に影響する縦渦に足して気泡がどのような振舞いをするのかという点に注目した.チャネル内に20〜30μmのマイクロバブルを電気分解によって発生させ,乱流中におけるマイクロバブルの挙動を乱流構造の可視化を行った.乱流構造の可視化にはKalliroscopeという2〜10μm以下の板状の微粒子を用いた.マイクロバブルの挙動をPTVによって計測すると,気泡がスパン方向に振動することが確認された.これによって,マイクロバブルが乱流構造に干渉しそれぞれの運動特性によって相互に壁面摩擦に働きかけていることを示唆することが得られた.また,人工的に発生させた縦渦に気泡を混入させ,気泡と縦渦のそれぞれの影響を調査した結果,縦渦の渦度が減少し渦核の距離が離れることがわかった.さらに気泡の移流速度は縦渦の回転速度よりも遅く,その回転時の振動周期が異なることがわかった.層流から乱流までの低Re数で実施されていることである.これは数値シミュレーションでの対応が取れる実験であることである.これまでに数値シミュレーションで問題となっていた気泡によって誘発された擬似乱流の影響をシミュレーションのモデルに含めるか否かを判断する重要な材料となった.また,本研究中に本研究では気泡界面と壁面せん断応力を動機計測することにより気泡が通過した後に摩擦が低減することを確認し,この低減効果を表す瞬時ゲインが3.5〜5.0(平均で2.0程度)であることが確認された.これは気泡群が壁面を通過した後,低減効果が持続されることを意味する.これは単に気泡を吹き込むことで摩擦抵抗を抑制させるのではなく,気泡の吹き込みを制御することで積極的な摩擦制御につながる. 本研究課題では「単一気泡周りの流れ場が引き起こす摩擦抵抗増減効果」,「気液界面で汚れの影響を含まない条件での摩擦抵抗低減効果」,「微細気泡と乱流構造の干渉」の現象を可視化し包括的な解明のための基礎を築いた.
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