研究概要 |
コンパクト等質複素多様体がケーラー構造をもつならば、旗多様体と複素トーラスの直積になることが知られている。特にコンパクト複素平行可能多様体がケーラー構造をもつならば複素トーラスとなる。したがってケーラー構造の一般化である擬ケーラー構造の場合にどの様になるか、ということが研究目的になる。平成18年度は、コンパクト擬ケーラー複素平行可解多様体はモストフ束が複素トーラス上の複素トーラス束の構造をもつことを示した。本年度は、これに関連して等質複素多様体でない場合に、擬ケーラー可解多様体で自然なファイバー束が複素トーラス上の複素トーラス束にならない例の系を構成し、さらにそれらは擬ケーラー構造から誘導される不定値計量に関する断面曲率がすべて0となることを示した。また擬ケーラー構造が存在する場合には、ケーラー構造と同様に調和形式が定義でき、ドルボー・コホモロジー群に関するホッジ理論を考察できる。例えば擬ケーラー多様体がケーラー多様体の場合と同様にレフシェッツ定理を満たすならば、任意のドルボー・コホモロジー群は調和形式を代表元にもつことが示せる。本年度は擬ケーラー多様体におけるドルボー・コホモロジー群に関するホッジ理論、および(0,q)型ドルボー・コホモロジー群に収束するルレイのスペクトラル系列の退化性についての論文を加筆修正し、雑誌に投稿した。また、擬ケーラー構造をもつコンパクト可解多様体の葉層構造に関する結果も得ている。
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