研究概要 |
研究課題の共鳴共振器型デバイスを作製するためには、酸化亜鉛(ZnO)とマグネシウム添加酸化亜鉛((Mg, Zn)O)を含むヘテロ界面の成長制御性を高め、その界面の持つ特性を知る必要がある。初年度として、ZnO/(Mg, Zn)Oヘテロ界面における伝導機構について詳細に検討した。パルスレーザ堆積法を用いて積層構造を作製し、フォトリソグラフィーとイオンミリングを用いて、Hall-bar形状に加工した。Hall効果の温度依存性を測定したところ、高い移動度(5000cm^2/Vs(1K))が観測され、2次元電子ガスが界面に生成されていることが示唆された。試料を45mKまで冷却してRxxとRxyを測定すると、シュブニコフドハース振動と量子ホール効果の観測に成功した。2次元電子ガスが界面に誘起される原因を、自発分極量とピエゾ電界の寄与を受けた界面のシートチャージによるもの、と説明した。一方で、シュブニコフドハース振動の周期が特異な振る舞いをしており、スピン分裂などの機構を考慮する必要があった点については、今後も検討を行う必要がある。界面における特異な電子状態が縦型デバイスの動作に影響を与えることが懸念されるためである。この結果は酸化物ヘテロ界面における初めての量子ホール効果としてScience誌に掲載された。 次に、ZnO/(Mg, Zn)O積層構造における光誘起キャリアの振る舞いを検討した。4Kで波長266nmのレーザを1秒間照射することで、シート抵抗が約3MΩから2kΩへと約3桁の抵抗減少が観測された。光照射後、暗状態で30分保持したところ、永続的光伝導であることが確認された。次に、温度を上昇させる過程でのシート抵抗の温度依存性において金属的な特性を観測した。Hall効果測定によって、この抵抗減少が電子濃度の大幅な増大ではなく、移動度の上昇によって引き起こされていることがわかった。この結果を考えると、光誘起された電子が界面に徐々に蓄積され、イオン化不純物散乱が遮蔽されていると想定される。400Kで5分程度保持すると、シート抵抗は暗状態での初期値に回復し、温度依存性においても絶縁体的な挙動を示した。この結果は、Applied Physics Lettersに投稿予定である。
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