研究概要 |
イオンチャネル形成毒ポリセオナミドは、生体膜中で電位依存的な開閉挙動を示すペプチドナノチューブを形成する。ポリセオナミドは多数の非タンパク質構成アミノ酸を含む48残基のアミノ酸がD,L体交互に並ぶ特異な構造を持つ。ポリセオナミド程巨大な非リボソームペプチドの合成は生物学的にも化学的にも未踏の領域である。前年度に全合成を達成したが極少量であった。本年度はポリセオナミドの大量合成を行い、NMRによる構造解析を行った。また、未解明であったポリセオナミドBのスルホキシドの立体化学の決定を達成した。 ポリセオナミドは、後の簡便な誘導体合成を視野に入れて、4つのペプチドフラグメント調製と続くカップリングにより収束的に全合成する計画を立てた。 すでに11種類のポリセオナミドを構成する非タンパク質構成アミノ酸の合成は完了していた。これらのアミノ酸を用いて4つのペプチドフラグメントをペプチド自動合成機を用いてアミノ酸を連結して合成した。これらのフラグメントを銀塩を用いたアミンとチオエステルのカップリング反応を3回繰り返して順次連結し、全合成を達成した。また、4つのフラグメントからカップリングにより2大フラグメントを合成し、これらのカップリングにより全合成を行う方法も試みた。合成したポリセオナミドは天然のポリセオナミドBと同等のMSスペクトル,HPLCチャート、細胞毒性を持ち、共同研究者によりNMRによる構造解析を行い、天然物と同一の構造であることを確認した。このことからポリセオナミドBの世界で初めての全合成を達成し、未解明であったスルホキシドの立体化学がR体であることを明らかにした。
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