研究概要 |
本研究は対人恐怖についての実証研究であり,対人恐怖心性を指標に一般青年の精神的健康に対する予防法,治療応用性に言及することを目的とした。前年度にて,対人恐怖心性と自己愛傾向を相互関係にて扱った対人恐怖心性-自己愛傾向2次元モデルの作成を行った。今年度は,2次元モデルから分類される5類型状態像の明確化が課題となる。以下の2点を主要軸に研究を進めた。 1.2次元モデルにおける5類型特性の明確化 5類型に特徴的な性格様式および心理的ストレス反応のあり方を精査した。本論は,パーソナリティ研究に掲載予定である。また,多次元自我同一性尺度を使用して,5類型における自己概念の多面性を精査した。本論は,心理臨床学研究にて掲載予定である。 さらに,5類型における一連のストレス過程のあり方を精査した。そして,社会恐怖認知モデルの援用により,5類型における認知様式のあり方を精査した。これらは,心理学関連雑誌に投稿・査読中である。 2.各類型の素因-ストレスモデルの検討および類型移動の様相 パネル調査を行い,5類型における素因変数とストレッサーの交互作用項に検討を加えた。 しかし,大量サンプルが必要となる点,各類型にて素因変数が異なる可能性がある点にて,今後に課題を残した。また,一定のストレス状況下での類型維持・変化の検討を行った。その結果,環境要因の影響は少なく,各類型は一定の安定性を持つことが示唆された。 これらより,実証的見地から対人恐怖には異なる背景を持つ2タイプが存在すると考えられた。2タイプは,性格様式・ストレスコーピング・認知様式に異同点を有することから,臨床応用には各々異なる補完的視点が必要となる可能性が示唆された。
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