研究は前年度および研究計画に引き続き実施した。前年度によりTHIR2はタンパク質分解系に関わる酵素複合体を形成し、サリドマイドはregulatorであるRをTHIR2から解離させることにより作用することが判明している。そこで今年度は、この現象がin vivoにおいていかなる意義があるのかを検証するために、ゼブラフィッシュをモデル動物として用いた解析を行った。ゼブラフィッシュを受精後3時間において800uMのサリドマイドを投与したlingerにて薬浴させることにより、ヒトにおける耳の奇形(縮小)を再現することが判明した。そしてTHIR2の遺伝子発現を抑制するモルフォリノアンチセンスオリゴを作成し、ゼブラフィッシュ胚にマイクロインジェクションさせたところ、同様の耳の縮小を検出することに成功した。次に、耳の奇形がTHIR2のみを介しているかどうかを確かめるために、サリドマイド非結合型点変異体の作成を行った。THIR2のC末にサリドマイドが結合することは前年度までの解析により判明していたが、さらに絞り込みを行い、サリドマイド結合能が野生型の1/10-100の点変異体を作成することに成功した。今後、THIR2をノックダウンしたゼブラフィッシュにおいて以上のサリドマイド非結合型点変異体を発現するmRNAを導入することでrescue実験を行い、その上でサリドマイドを薬浴した際に、奇形が生じないかどうかを検証する予定である。またRに対するモルフォリノをゼブラフィッシュに導入した際に、THIR2を抑制した表現型もしくはサリドマイドを薬浴させた表現型と類似しているかを検証することを計画している。
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